憧憬と執念と欲望と02

 ヨコハマとシンジュクがバトルをした後に一郎はかつてTDDのときに使われていた、たまり場となっていた部屋へふらりと向かった。二郎や三郎には先にご飯を食べて寝ておけと言っておいた。いつかのようにたまり場で朝を迎えるのも良いかもしれない。
 部屋の借り主である乱数はその儘家賃を払っているらしく、鍵を持っている者であれば誰でも出入りすることが出来た。たまに乱数の要らない布や服が積んであったり、ソファやベッドの下の埃が無くなっていたり、煙草の匂いが残ったりしているので各々好きに寄っているようだった。
 鍵を差し込んで回す。かちりと鍵が開いた音がした。一郎は扉を潜り、同じように鍵をかけた。ソファが置いてある居間には誰もいない。仮眠室として使われていた、奥にある部屋の扉を開ける。ベッドは何時ものように整然としていた。一郎は安いパイプベッドに倒れ込む。何もかもに疲れた。自分たちがそのステージに立つ筈だったのに、とやりきれない感情に襲われる。くそっ、と悪態をつきながら布団を殴った。ぼす、と空気が抜ける音がする。その儘瞼を下ろすと、ゆるゆると睡魔に飲まれて行った。
 どれくらい眠っていたのだろうか。突然掛け布団が剥がれた。その衝撃で一郎は目が覚めた。掛け布団を剥いだ人、左馬刻も驚いたように目を見開いている。だが直ぐにその顔を歪ませた。

「胸糞悪ィ、久し振りに此処で寝ようと思ってたのにてめぇの面を拝むことになるなんてよ」

 左馬刻は掴んでいた掛け布団を一郎に放る。一郎は寝起きの為に、何が何だかよく解らない。未だ夢の中なのかと思い、ほぼ反射的に左馬刻の細い手首を掴んだ。掴んだ手首は思ったよりもかなり細くて、一郎は動揺した。軽く腕を引っ張ったつもりなのに、左馬刻は勢いよく倒れ込む。一郎は咄嗟に、しかし腕は掴んだ儘ではあるが、身体を避けさせる。ぼす、と左馬刻が布団に倒れ込んだ。一郎が肩を掴んで仰向けにすると、左馬刻は不愉快そうに顔を歪ませる。肩も、思ったよりもずっと薄くて、一郎はまたぎくりとした。

「退けや」

 一郎は返事もせずに、思わず左馬刻をまじまじと見詰めた。脳味噌は、こんなにも弱い存在じゃなかった筈だろう、と混乱を極めている。左馬刻が動こうとしたのを、一郎は肩を布団に押し付けることで阻む。左馬刻が膝で一郎の背中を蹴った。酷くか弱い攻撃で、もしかして戯れてるんじゃないか、許されてるんじゃないかと一郎は錯覚する。どく、どく、と心臓が脈打つ。性欲と憧憬と好奇心とがごちゃまぜだ。
 一郎がベッドに登ると、ぎしりとベッドが軋む。左馬刻に跨ると、左馬刻がもう一度鬱陶しそうに一郎を蹴る。痛いことは痛いが、一郎が思っていたよりもずっと弱い衝撃だ。やはり、赦されている、と一郎は確信と言う名の思い込みをする。は、と吐いた息は荒く、熱かった。

「左馬刻、」
「てめぇの、脳味噌はウジでも湧いてんのか!」

 左馬刻が無理矢理に振り上げた腕は一郎の顔に綺麗に当たった。ぐわんと脳味噌が揺れる。一郎が左馬刻を見下ろした途端、どろりと鼻から生温かいものが落ちた。ぼた、ぼた、と白いアロハシャツに赤色が広がっていく。一郎は手の甲で鼻の下を撫でる。真っ赤な血液が付着していた。

「ハッ、ちったぁ冷静になれるか? 一郎くんよぉ」

 せせら笑う左馬刻を余所に、一郎は鼻血を止めることもせず、血で汚れたアロハシャツの胸元を引っ張った。ぶちぶちっ、と糸が千切れる音と同時に白い胸元とそれを覆う黒いレースが顕になる。恐らくボタンは部屋の何処かに転がったのだろう。一瞬呆けた顔をしていた左馬刻が、瞬間に顔を険しくさせる。

「こンのクソボケ! 離せや!」

 ぎゃんぎゃんと左馬刻が吠え立てる。飛んで来た拳を一郎は反射的に掴んだ。そうか、手をどうにかしないとと他人事のように冷静に考えながら血で汚れたアロハシャツを白い腕から引き抜き、乱雑に手首同士をきつく結んでやる。それをベッドの所にある出っ張りに引っ掛けた。何時もなら緊張が走るが、全く怖くない。可愛い、と何処かずれたことを感じた。

「何手ぇ縛ってんだテメェは!」

 罵声を聞き流しながら一郎は白い胸元に手を遣る。左馬刻が僅かに身体を固くさせた。ふに、と柔らかい感触だ。手に余らない程度の胸はマシュマロのように柔らかく、また、掌に吸い付くような感覚が面白く、ずっと触っていたくなる。
 両手で胸を真ん中に寄せるようにすると谷間がはっきりとできる。そこに顔を押し付けると自分の血の匂いに混じって香水の香りと、何処となく甘いような香りが鼻腔を擽った。すん、と息を深く吸うと鼻にあった血液が口にまで流れた。ごくんと飲み下す。それでも僅かに甘いような香りがする。こんな所、家主の乱数にすら見せられないな、と思いながらも一郎は確かに興奮していた。
 縊れた腹回りを指でなぞり、筋肉の無さに驚く。臍の窪みに触れれば擽ったそうに腹が波打った。陸に打ち上げられた魚みたいだ、とぼんやりと思いながらスカートのウエスト部に触れる。

「このクソ野郎ッ!」

 横から飛んできた脚を寸での所で手で受け止め、一郎は少し考えた後に脚を曲げさせた。ほんの強く足首を握っているだけで抵抗らしい抵抗はない。本当に、こんなに、呆気なかったのか、と一郎は少しだけ寂しさに似た感情を覚える。何処か失望に似た感情だった。
 脚を開かせて曲げさせると、薄手のストッキングに包まれた下腹部が見えた。一郎は左馬刻の脚の間に入り込み、両手でストッキング摘まんで左右に引っ張ってみる。爪を立ててから引っ張ると思ったよりも簡単に破けて驚いた。白い素肌が光を反射させて仄かに輝いているように見える。掌を押し付けて撫で擦って、肌の滑らかさに感動を覚えた。左右から蹴りと正面から怒号が飛ぶが一郎にとって些細なことだった。また一つ、また一つとストッキングに穴が開いていく。そう言えば、と一郎はTDDに属していたときに、ストッキング代も馬鹿にならねぇと左馬刻が愚痴っていたことを思い出した。ほんの少しだけ申し訳なさを覚えたが、一つでも穴が開いて仕舞えば後は同じだろうと、一郎は穴をますます開けていく。いつか見たアダルトビデオのようだと埃を被っていた記憶を掘り返した。
 黒いレースで出来た下着を横にずらして指を触れさせる。左馬刻が滅茶苦茶に罵声を吐き出し一層抵抗を示させた。一郎は知らない振りをして指の腹を左馬刻の秘部に押し付ける。当然というべきか濡れていない。一郎は自分の口に指を入れて丹念に唾液を塗した。本当は左馬刻に舐めて欲しかったが、恐らく指を食い千切られて仕舞うだろうと思ったのだ。
 唾液で濡れた指を何度か膣口に擦り付けさせたが余り変化はない。ほんの少し上にある、薄い皮に包まれた陰核に指の腹を押し付けさせる。

「やめろつってんだろクソボケ!」

 あんまり怒鳴ると喉が潰れるのに、と一郎は思いながらも指先を何度も押し付ける。拒絶の言葉を理解するほどの思考回路を一郎は持ち合わせていない。拒絶を拒絶であると理解出来てすらないのかもしれない。ただ、仄暗い欲望だけが一郎を突き動かしていた。
 そう言えば、と薄皮を向いてやると小さな尖りが露わになる。そっと指先を押し付けた。

「ひぅっ!」

 高い声に一郎は驚いて何もかもを忘れてしまった。まじまじと左馬刻を見る。左馬刻は羞恥から顔を赤くさせて、一郎を睨み付けた。一郎は呆然とした頭の儘、もう一度指先を軽く押し付け、円を描くように動かす。左馬刻が腰を跳ねさせ、殺した声を響かせた。次第に陰核は硬く、大きくなる。一郎はごくりと生唾を飲み込んだ。

「あぅっ、死ねッ、ぅあッ! ひ、ん、んぅっ、」

 鋭い言葉や表情は次第に柔く、形のないものになっていく。一郎は息を荒らげながら、稚拙な愛撫をする。陰核をくにくにと押し潰せば次第に左馬刻の抵抗も弱くなった。
 指先をずらせば、ぬるりと滑った。一郎にとって脳味噌が吹き飛ぶほどの衝撃だ。恐る恐ると指先を滑る膣口に宛がい、ぐ、と力を籠めるとゆっくりと入り込んだ。温かくて湿った感覚に一郎はいよいよ訳が解らなくなる。嬉しいような、泣きたいような、違うと叫びたいような、そんな感情を抑え込んで一郎は指先を動かす。くち、くち、と水音が鼓膜を擽った。ジーンズの下にある自身が血を吸い過ぎてずきずきとした痛みを訴える。
 今やすっかり怒声は引っ込み、その代わり湿った嬌声が出されている。そんな声が出るんだと熱い頭で思いながらきついそこを解そうと一生懸命に指を動かせる。何時の間にか一郎の鼻血は止まっていた。
 指の本数を増やして、ゆっくりと押し開くように動かす。熱い粘膜は一郎の指を咥え込み、一層奥へと誘うように蠕動する。一郎はこの行為は自分本位ではあるが、左馬刻にも気持ち良くなって欲しかったのだ。それが一層左馬刻に屈辱を味わせるものとは思わずに。

「ひぁっ、やっ、やめろ! や、やぁっ……!」

 びく、びく、と時折身体が大きく跳ねる。左馬刻の、見たことのない姿に頭の先から爪先まで一気に血液が巡る。鳥肌が立ち、全ての毛が逆立つ。
 可愛い、可愛い、かわいい。
 ただその言葉だけが一郎の脳を埋め尽くした。あんなに憧れていた人が、あんなに敬遠していた人が、今、自身の下にいるのだ。支配しているのだ。触れる度に、小さく可愛らしい反応をする。それは普段から得られるイメージとは程遠い、正に力で押さえつけることが出来る、か弱い女性そのものだった。
 もう殴りはしないだろうと思って左馬刻の手首に巻き付いていたアロハシャツを外す。白い手首が擦れて赤くなっていた。一郎は左馬刻の赤くなった箇所に唇を何度も押し付ける。暫くその跡が残るのかと思えばとんでもなく愉快な気持ちになれた。手を解放すると、力なく敷き布団の上に落ちた。無力で無様で可愛いさで胸が掻き毟られる。

「っ、さまとき……」

 キスがしたいと思って、一郎が顔を寄せる。だが、左馬刻は一郎の顎を掌で押して、顔を背けさる。そんなにキスをするのが嫌なのか、と少し傷付いて自身の下唇を僅かに噛んだ。一郎は、涙やら唾液やらでべたべたになった頬に自身の口を押し付けさせる。尚も嫌がるように掌が一郎の肩を突き飛ばす。それでも一郎が触れている所はきゅうきゅうと指を締め付ける。やはり、赦されている、と一郎は何処か確信に似たものを得た。
 指を引き抜くと、びくんと細い脚がはねた。陰唇を指で押し開くようにすると濃い桃色をした内部が見える。しね、と左馬刻が震えた声で吐き捨てる。一郎は、それには返答しなかった。ズボンの前を寛がせるとあからさまに左馬刻が身体を強張らせ、嫌がるように一郎の脚を蹴る。だが、一郎にはそれも戯れてるように見えた。一郎が下着と一緒にズボンを下ろすと、すっかり固くなった男根がまろびでる。ひっ、と左馬刻が息を鋭く吸った音が聞こえた。先端からは先走りが零れ、それ程までに興奮していたのか、と何処か他人事のように一郎は考えた。
 自身の腰を、左馬刻のすべすべとした太腿に押し付けさせる。きちんとストッキングを脱がせたら良かったかな、と漠然と思いながらも擦り付ける感覚が気持ち良くて次第に何も判別つけられなくなる。

「挿れる、ぞ」

 宣言した途端に左馬刻が抵抗を再開させた。掌が何度も一郎の肩や胸を叩き、脚が膝で腰や背を蹴る。可愛い、と一郎は舌の上で言葉を転がした。細い腰を掴んでずれないようにする。膣口に先端を擦り付けると罵声が飛んできた。どうせ初めてじゃない癖に、と何処か詰るような気持ちで一郎は一気に先端を埋めさせる。

「い"っ、ぁあ"……っ、の、やろっ……!」

 悪寒にも似た快感が背筋を一気に駆け上がる。左馬刻の苦痛に染まった声を聞いて、一郎は申し訳ないとちらりと思った。それを上書きする程の締付けに歯を食いしばる。ぬるぬるとした粘液で濡れそぼった肉襞は一郎の男根を包み込み、押し出そうと動く。粘膜と粘膜が触れる感覚に一郎は腰が蕩けそうだった。ぐいぐいと腰を押し付け、奥へ奥へと挿入り込もうとする。

「すげっ……左馬刻のナカっ、きもちい……!」
「ぐっ! ぅん"ッ、く、ぅ"ッ」

 一郎が腰を前に突き出す様に動かすと先端が子宮口に入り込んだ。一郎は、左馬刻の腹の中まで自身が満たしている事実に気を好くさせる。何度も腰を軽く引いては突き出す動きを繰り返す。先端が子宮口に触れる度に、脳髄を焼き切りそうな程の快楽と興奮のあまり何も考えられなくなる。白い喉が無防備に仰け反る。くらり、とした。

「ぁ"ッ、あ"っ、――くそっ、くそぉッ……!」

 左馬刻の悔しそうな顔を、多分、恐らく、きっと、一郎は初めて見た。新しいこと尽くしだ。他にもそんな顔を見せた男がいるのだろうかと腹の中で良くない感情が蠢く。
 左馬刻が自身の腕を交差させて顔を隠す。一郎はその腕を捉えて顔をから離した。その腕を自身の背中に回したが、左馬刻は一郎の背中に縋り付くことはしなかった。白い手は、シーツをきつく握り締める。

「左馬刻、さまときっ、」

 好きだ、という言葉は続かなかった。代わりに可愛い、と言葉を出す。犬みたいにヘコヘコと腰を前後に動かして快楽を貪る。ぐちゅぐちゅと粘っこい水音に、腰がずくんと甘く震えた。所詮、男なんてそんなもんだと一郎は自身を正当化する。

「っは、出すっ、左馬刻、出す、から」
「――へっ? や、やだ、やめっ、や、あっ、あ"、」

 左馬刻の抵抗も虚しく一郎の精液は胎内で放たれた。赤い目が見開かれ、ぶるぶると唇が震える。一郎は男根を精液一滴すら残さないように締め付けられた所為で、尿道に残った精液を吐き出させるように何度も乱雑に左馬刻のナカを突く。その度に声を上げるのが、滑稽で可笑しかった。
 一郎は吐き出した精液を胎内に馴染ませるかのように、奥へとやるかのように腰を揺する。粘膜が擦れ合う度に新たな快楽が生まれ、一郎の男根は次第に硬くなる。
 精液を溜め込んだ、白い腹を掌でゆるりと撫ぜる。孕めば良いと、思った。孕んだその後は、何も解らない。こんなことをしても、何をしても、もう元には戻らない。
 一郎は左馬刻のことを妄信や崇拝などしていない。一郎は自分で物事の判別をする事ができる。TDDの時から左馬刻のように、強くなりたいと思っていた。誰からにも屈服させられない人間になりたいと思っていた。殴られても蹴られても踏まれても何があっても、心には真っ直ぐとした芯があって、何があっても折れないような、自身を忘れないような、見失わないような、そんな人間に。
 腰を揺すると血色の良くなった喉が仰け反った。きゅう、ときつく締め付けられ、射精を促される。どれ程欲しがってるんだ、と一郎の脳味噌は勝手な言葉を弾き出した。

「――クソッ、ぁ、……っしね、っ、この、」

 白い腕が振り上げられた。叩きつける、というより力なく一郎の広い肩をぺち、ぺち、と何度も叩く。睨み上げた赤い目は涙で縁取られ、快楽で蕩けかけていたが、はっきりとした嫌悪と殺意と憎悪が存在している。きっと、気を抜いたら喉元でも噛み千切られそうだ。
 身体の何処も彼処も熱い。それなのに、一郎は脳髄だけが冷え切っている。一郎は息を吐く。そこには確かな安堵が存在していた。

「左馬刻、かわいい、かわいい、」

 うわ言のように呟いた。一郎は左馬刻の白い背中を押してうつ伏せにする。左馬刻は上体を起こせないらしく、腰を高く上げさせられたような格好になる。結合部を見れば、狭い膣口はしっかりと一郎の陰茎を咥え込んで離さない。僅かな隙間から精液と愛液の混ざった体液が溢れている。生々しく陰猥な光景に一郎は目眩を覚えた。
 透明が混じった白濁を掬って一郎は窄まりに触れる。左馬刻が勢い良く一郎を見た。その顔には焦りが浮かんでいる。

「おいっ! どこ触っ、ぁぐっ、ふ、」

 一郎は左馬刻の言葉に反応はせずに、右の中指を捩じ込んだ。左馬刻は苦しそうに息を吐きながらぶるぶると震える。一郎は、宥めるかのように白い背中に唇を落としながら、ぬっ、ぬっ、と指を奥へと咥え込ませる。押し出そうとする動きに逆らいながら左馬刻の体内を蹂躙する。指の本数を増やし、内壁を擦る。左手も使って尻朶を押し開くと肉色をしたそこは思ったよりも綺麗だった。
 もう挿れて仕舞いたいと、衝動に駆られ、一郎は秘部から男根を抜こうとする。追い縋るように絡みつく肉襞の感覚が心地良い。引き抜くとぽっかり開いたそこから白濁がとろりと溢れた。一郎は愛液と精液に塗れた男根を窄まりに押し当てる。

「っ、くそっ、ダボが! ぐ……ぁッっ! ――ざけやがっ、ぐ、ぅ"」
「くぁっ、キッツ……」

 ぐっと腰を押し付けるとかなりきつく締められる。それでもとゆっくりと馴染ませながら進めるとみち、みち、と嫌な音を立てながらも猛り切った男根が後孔に入り込む。左馬刻は意識的に肩で呼吸を繰り返させている。顔は何処か青い。

「なぁ、前はともかく、お尻って処女?」
「ったりまえだろカス! そんなっ、ひぐッ! ――トコに突っ込んで堪るか!」

 後孔ではあるが、左馬刻の初めてになれたのだ。その事実がどうしようもなく一郎を喜ばせる。

「嬉しい……っ!」
「ひぎッ!? ぁ"っ、てめっ……!」

 興奮のあまり、一郎は先端が抜けるほど引き抜き、一気に動きを逆転させて奥へと突き刺した。左馬刻が何度も身体を跳ねさせ、苦痛の声を上げる。一郎は奥にある窄まりに先端を吸い付かれる感覚が、子宮口に吸い付かれる感覚とよく似ていて堪らない。自分勝手に挿入を繰り返す。だが左馬刻の声も、次第に喜悦の色に染まっていく。一郎が射精するのにそんなに時間はかからなかった。
 倦怠感を覚えながらも一郎は左馬刻を離そうとしない。肩に、肩甲骨の膨らみに、背筋に唇を落としていく。左馬刻は嫌がるように首を横に振る。一郎は左馬刻の項に歯を立てた。

「嫌いだッ、テメェなんか、だいき、ぁ、ぁあ"っ! ……っ、きらいだぁッ」
「……すきなくせに、」

 形の良い耳殻に唇を押し当てながら、そんな言葉を呟いた。そうであれば本当に良かったのに、とピアスごと口に含めて甘く噛む。
 今、手を離せば左馬刻は自身の元へ戻らないことを、一郎は感じていた。尤も、左馬刻は一郎の元へいた事は一度も無い。それでも今この瞬間だけでも、閉じ込めて仕舞いたかった。
 更に、存分に精液を吐き出した後、一郎は自身を引き抜いた。もう何度前にも後ろにも注いだのか解らない。弛緩した前からも後ろからも、白濁が零れ落ちた。時折空気と一緒に溢れ、左馬刻の所々破けたストッキングに包まれた太腿を濡らす。そんなに出るもんかと自分が吐き出した精液を何処か遠い所のように眺める。
 一郎は左馬刻の顔を両手で包み込むようにして触れる。薄く開いた唇に、自身のそれを押し当てた。舌を挿し込むと、左馬刻は嫌がるように逃げる。それを一郎は掬い取り、吸い付き、上顎を舌先で擽る。上も下もぐちゃぐちゃになって、ひとつになったつもりになっている。
 舌に鋭い痛みが走った。一郎は咄嗟に下を引っ込めさせる。左馬刻が一郎の舌を噛んだのだ。やはりそうあるべきだと、一郎は口元に弧を描かせ、左馬刻の唇に唇を押し付けた。

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