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TEMPORARY

一時的な置き場

理想狂とカタストロフィ5


 車は緩やかに三ツ谷の、余り使われていないセーフハウスへと到着した。三ツ谷は運転手に帰って良いよと指示を出す。殆ど寝るための家だ。ベッドだけがある、生活感のない空間に誰かを招き入れることは殆どない。座れよ、と三ツ谷は大寿に柔らかい口調で命令する。三ツ谷がベッドにローションのボトルを置いたのを、大寿は眉間の皺を深くさせて睨み付ける。大寿は全て拒絶したかった。三ツ谷がどういう趣味をしているか全く知らないが、ろくなことにならない予感ばかりが肌に纏わりつく。大寿は自身よりも小柄な身体を殴って倒して馬乗りになり、怒りのままに殴ってしまいたかった。それでも大寿が怒りのままに暴力の限りを尽くさないのは、危害が加えられる可能性が高いのが柚葉と八戒だからだ。大寿は三ツ谷の言葉に従うしかない。そうするしか道は残されていない。
 大寿が大人しくベッドに座れば三ツ谷は大寿の肩を軽く押す。大寿は仰向けに倒れた。汚れ一つない天井が視界に入る。三ツ谷は大寿の上に圧し掛かる。大寿の金の目は三ツ谷を軽蔑の色で睨み付けていた。
 三ツ谷の手が大寿のジャケットを脱がせていく。良い生地だねと歌うような声で言いながら、三ツ谷は指の腹で生地を撫でる。三ツ谷の掌が大寿の首筋に触れる。安心させるような手つきとは対極にある触れ方に、大寿は眉間に皺を寄せさせる。大寿とて何も知らない訳ではない。

「女だけでなく、男にも手を出すようになったのか」

 三ツ谷の手が大寿が来ているシャツのボタンを外していく。三ツ谷の視線が数秒ほど大寿の目を見た。大寿くんだからだよと三ツ谷は答えた。質問に対する回答の意図が解らず、大寿は口を閉ざす。暗い部屋で大寿の目は三ツ谷のことを批判し、軽蔑し、嫌悪し、拒絶している。自身よりも弱い立場の者を人質にするような人間の思考など理解をしたくもないのだろう。身体の恵まれた大寿くんにはわからないよぉと小馬鹿にしたような声で三ツ谷はおちゃらけてみる。大寿の纏う空気はちっとも和らぐことはなかった。三ツ谷は大寿の形の良い唇に口を寄せさせる。大寿は露骨に顔を背けさせた。

「何、心に決めた人でもいるの?」

 大寿は何も言わない。三ツ谷が知っている限り、そんな人などいる筈がない。嫌がらないでよ、と一言告げてから、唇を無理に奪う。大寿が何か訴えていたが知らないふりをした。三ツ谷の手は性急に大寿のベルトを外し、どこぞへと放り投げる。ジャケットと同様に質のいいスラックスをグレーのボクサー諸共太腿の少し下あたりまでずり下げさせる。大寿の陰茎は全く兆していなかった。その状態であっても体格に見合ったふてぶてしい物だ。使い込まれていないのか色は淡いものでミスマッチだ。女と寝たことある? と三ツ谷は大寿の信仰している宗教を知っていながら問うた。大寿は不服さを隠さずに三ツ谷を睨み付けるだけだ。三ツ谷の手が大寿の陰茎に触れる。あまり反応は良くない。うーん、と呟きながら三ツ谷はスラックスのポケットから青い蓋の軟膏容器を取り出す。蓋を開けて白い軟膏を指先に取った。
 三ツ谷は大寿に脚を開くように告げる。大寿は嫌々ながらも従うしか許されていない。三ツ谷は枕をクッション代わりに大寿の腰とベッドの間にかませる。普段晒すことの決してない下半身が顕わになる。羞恥と怒りとが暴風雨のように大寿の中で吹き荒ぶ。何も守るべきものがなければ大寿はこの男の首を引っ掴み、締め上げていただろう。大寿は奥歯を噛みしめ、耳鳴りが聞こえるほどの怒りに耐えることしか許されない。恐らく三ツ谷の気が済むまで解放されることはないのだろう。レストランが気にはなるが、オーナーがいなくても問題なく回せるように普段からしている。世界から大寿が消えたところで、左程影響は大きくない。
 三ツ谷は涼しい顔のまま大寿の脚の間へ陣取る。太腿を軽くぺちんと叩き、言外にもっと開けと訴える。筋肉質の脚が先ほどよりも少しだけ開き、あるはずがないと理解しているのに迎合しているように思えた。紙に落ちたインクが広がるように三ツ谷の胸中で淀んだ色の喜びがじわりと広がる。

「注射が一番効くんだけど注射痕を嫌がる男って結構多くてさぁ」

 指先を何も受け入れたことのない窄まりに押し付けさせる。大寿の腰がびくんと跳ねたが知らないふりをして皺の一つひとつ丁寧に塗り込んでいく。注射痕ぐらい我慢してほしいよなぁと三ツ谷はどうでも良いことをなんてことのないように話す。大寿はシーツを握り締めた。体内を拓かれる違和感がどうにも慣れない。三ツ谷の指が入り込み、内側にも丁寧に塗り込むような動きをしている。大寿は険しい顔をしてされるがままだ。三ツ谷の指が体内を探るような動きをする。痛みこそないが違和感が強いのだろうと三ツ谷は考えながらローションを加えつつ何も受け入れたことのない肉筒を暴いていく。指の抽送を繰り返し、本数も増やしていく。少し前に風俗に流した女の後孔に陰茎は勿論極太バイブだとか凡そ膣には挿入らなさそうな物まで吞み込んでいたのをぼんやりと思い出す。狂ったように声を上げる女を眺めながらびっくり人間ショーかよと思っていたが、今まで何も受け入れた事のない大寿の窄まりが存外簡単に三ツ谷の指を埋めさせているのを見て、存外それはどの人間にも当てはまりそうだと考えに至る。この辺かな、と三ツ谷は指を鉤爪状に曲げさせ、臍側を引っ搔くように動かす。ある一点を三ツ谷の指が掠めた。

「おぉ゛っ!?♡」

 大寿の眼前でばちんと電気が走る。それは尾骶骨から一気に脳髄へと駆け上がった。一気に皮膚が赤く染まり、じわりと汗が滲む。大寿は何が起こったのか理解できていない顔をさせている。三ツ谷が口元に彩らせた笑みを深くさせた。先ほど掠った個所にぐいぐいと指先を押し付ければ、大寿は背を仰け反らせ喉から声を出させた。三ツ谷は妹が昔持っていた、腹を押せば音を出す鳥のおもちゃを思い出した。当時は何が楽しいか理解出来なかったが、自分の行動で何かしら反応が返って来るのは面白いんだなと今漸く理解出来る。

「ここが大寿くんの悦くなるところなんだよ」
「ン゛ぐッ! ふ、ォ゛っ♡ っ、ほぉ゛ッ♡♡」

 膨らみかけた前立腺を指で押さえて何度も揺する。大寿が快楽を逃がそうと首を何度も横に振る。きちんとまとめられていた髪が次第に乱れていく。鋭い眼差しが快楽のせいで緩まり、キャパオーバーしたことにより出てきた涙で濡れていた。それでも抵抗してはいけないという意識はあるのか、大寿の手はシーツを強く握り締める。声を殺そうとするも、恐らく初めての強い快感に声を上げさせている。萎えていた筈の陰茎は血を吸い込み、先走りを零させて幹を濡らしていた。恐らく一生使うことのないものだ。可哀想にと他人事のように嘲笑う。
 ローションが泡立つぐちぐちとした音と雄叫びのような嬌声が響く。指を引き抜くと、大寿はぐったりと仰向けに倒れていた。スラックスと下着を太腿あたりまで脱がせたくらいで他は殆ど服が乱れていないのに、表情が、眼差しが、息使い、声が、肌が、いかにも性交をしていますと喉が張り裂けんばかりに主張している。弱々しく跳ねる肌を見ながら三ツ谷は自身もスラックスを脱ぎ捨てる。下着を下ろして、自身の陰茎が見たこともないくらいに膨れ、血管を浮かせていることに少し驚く。
 三ツ谷は大寿の上に圧し掛かる。滑らかな素材でできたシャツを指先で撫でると、大寿の唾液塗れの口から甘い声が落ちる。あの薬、マジで効くんだなんて三ツ谷はどうでも良いことを考えつつ、シャツの開いた個所から見える肌に唇を寄せる。汗ばんだ皮膚に吸い付き、痕跡を残す。刺青が入ったせいで僅かに盛り上がっている皮膚に歯を立てる。どろどろに甘ったるい声を上げて、びくんと身体が跳ねた。顔を上げると大寿は三ツ谷を睨み付けている。殺意、敵意、憎悪に嫌悪。軽蔑と侮蔑を入り混じったそれは、どう良く考えても嘗て友人だった人間に向けるものではない。尤も、友人だと三ツ谷が一方的に感じていただけという可能性もあるのだが。そりゃ大事な妹や弟たちをちらつかせて普通であれば異常だと言い切れることを行っているのだから、そうなるのも理解できないことはない。

「大寿くんにとって八戒や柚葉がそうみたいに、オレもマイキーがそうなんだ」

 酷く穏やかな声が三ツ谷の口から落ちた。いつでも鮮やかに思い出すことが出来る。中学生の頃に出来た東京卍會。今見れば笑ってしまいそうなほど馬鹿馬鹿しくて、真っ直ぐで、眩しいものだ。もうあの頃には帰れない。
 場地は死んだ。龍宮寺は死刑囚だ。一虎は今どうしているか知らない。万次郎が明らかにおかしくなったのは、妹のエマが死んだ後、それから龍宮寺に死刑判決が出た後だ。今や稀咲とイザナが東京卍會の実権を握っている。最初こそは抗った。それはおかしいと声を上げたが、万次郎は大丈夫と言って取り合ってくれなかった。けれど、龍宮寺が捕まり判決を下され、いよいよ万次郎は笑わなくなった。話さなくなった。塞ぎ込むようになってしまった。最後に万次郎の声を聴いたのは、最後に顔や姿を見たのはいつだったろう。
 今していることが万次郎が望んでいることである筈がないと理解しているのに、もう止まらない。止められない。自分たち、嘗ての東京卍會のメンバーでは土台足掻いても無理だ。抵抗する気力もなく真綿のような絶望に包まれながらいずれ来る終わりを緩やかな時間に身を任せて待っている。タケミっちがいればと思いかけて唇を噛んだ夜は数えきれないほどだ。助けてと誰にも言えなかった。後は壊れていくだけなら終焉が来るまで好きにしてやろうと決めたのはいつだったか。形振り構わず大寿との繋がりを得たがったのはいつからだったか。三ツ谷は今やどうでも良かった。
 大寿のスラックスと下着を脱がし、ベッドの脇へ抛る。猛り切った陰茎の切っ先を窄まりに押し当てればちゅ、ちゅ、と肉の縁が吸い付いて来る。薬のせいとは言え、求められているようで嬉しくなる。ひ、と大寿の喉が震える。今まで何も怖い事などないみたいな顔をしていたのに、少し愉快な気持ちになる。

「初めて、だよね」
「当たり前、だろうが」

 ふぅん、嬉しいなと自然と言葉が落ちる。大寿は理解できないような顔をしていた。ぐ、と腰を押し込むと肉襞が歓迎する。三ツ谷は歯を食いしばった。気を抜けば直ぐにでも射精してしまいそうだ。腰をゆっくりと押し進める度に大寿がくぐもった声を出す。大寿の唇は噛み締めすぎたせいで皮がぼろぼろになっていた。やがて三ツ谷の皮膚と大寿の皮膚がぴたりと合わさる。二人分の荒い呼吸が暗い部屋で小さく響く。三ツ谷は大寿の腰を掴んだ。動くよと一言だけ告げて、腰を引いてすぐに押し込めさせる。数多の肉襞が精液を強請るように絡みつき、しゃぶる。前立腺を亀頭で突けば大寿の身体が仰け反り、足先がぴんと伸びる。肉筒がきつく締まり、歯でもあれば噛み切られそうだと、そんなことを考えた。

「ぉ゛ぉ゛ッ……! ほ、っごォ゛♡」
「――はは、大寿くんって優秀だね。もう精液を強請る動き覚えやがって」

 いつか抱いた女の膣よりも大寿の直腸の方が比べ物にならない程強い快楽と数多の幸福感を与えさせる。何度も前立腺を幹で摺り上げさせ、快楽の渦へ落とす。大寿は困惑した顔のまま与えられる快楽に声を上げるしか出来ない。
 いつも我慢していた。積もったばかりの新雪を踏み荒らすのはいつだって可愛い妹たちだった。自分もやりたいと思っていたが、お兄ちゃんだからと常に我慢をしていた。妹たちが楽しそうだから、転んでしまわないように見守るだけだった。新雪を踏み荒らした感覚はこうなのだろうと自我を持って初めて理解した気持ちになる。あの時、妹たちを放っておいて存分に新雪を踏み荒らしていれば何か変わっていたのだろうかと自問する。解は出ない。

「薬のせいかもだけど、っは、こんなにケツで悦がる才能もあったんだ」
「〰〰ころひゅっ♡ ――ってぇ、ころひて、やるッ……!♡」

 出来もしない言葉に三ツ谷は思わず嘲笑を零した。触ってもいない大寿の陰茎からは精液が零れ、彼の逞しい腹を濡らして淫猥にてからせている。鋭さの増した目はすぐに与えられる快楽のせいで輪郭をぼやけさせている。三ツ谷の陰茎をすっぽしと咥え込んだそこは摩擦により赤くなり、ローションと先走りの混ざった液体で濡れている。殆ど女性器じゃねぇかと舌打ちをした。

「ンなトロついた顔で言っても説得力ねぇんだよ!」
「んぎィ゛ッ!?♡♡」

 腰を抜いて一気に最奥を穿つ。無理にこじ開けられた最奥は三ツ谷の陰茎を拒絶することもせずに包み込むように抱きしめる。ぎゅ、ぎゅ、と断続的に強く締められ三ツ谷は吐精した。大寿が目をカッと見開き、ぶるぶると身体を震わせる。

「ぁ゛っ……?♡ は、ァ゛……っ!♡ あ゛ぁッ♡♡」
「っはー、気持ちい……」

 困惑と快楽の入り乱れる声を耳にしながら三ツ谷は腰を揺すり、残滓すらも絞り出させる。こんな欲の満たし方を知ってしまったらもう戻れない。商売道具を摘まみ食いする部下たちの気持ちが何となく理解できたような気がする。
 三ツ谷は大寿の腕を引いて無理に起こさせた。自身の膝の上に乗せると自重で思ったよりも深い所まで挿入っているのか大寿が軽く絶頂に達する。ぶるぶると身体を震わせて俯く姿がなんとも嗜虐心を擽る。

「ねぇー、商売女みたいに媚びてみてよ」
「ン゛ぉっ♡ ふッ、ぐ♡ んぶ♡」

 三ツ谷が腰を揺すると大寿が唇をきつく噛みしめ声を殺す。顔を覗き込めば、顔を皺くちゃにさせている。力を込めて耐えているその表情が、泣くことを我慢しているときの八戒を思い出させた。泣くのを我慢しているんだと勝手な解釈をして三ツ谷はぞくぞくと背筋を震わせる。肉体は三ツ谷のことを歓迎しているのに精神が拒絶している。薬のせいで気が狂いそうなほどの快楽を得ているはずなのに、大寿は欲望に身を任そうとはしない。その乖離がきっとつらくて大変なのだろう。堕ちてしまえば、楽しむようにすれば楽になるのにと思いながらシャツを脱がせた。膨れた乳首を指先で捏ねるように転がしてやる。う、と呻くような声を上げて逃げるように身を捩らせる。開発がいるかなぁと思いながら乳首を摘まみ、ぎゅうっと強く引っ張る。痛みに耐えるような声が三ツ谷の鼓膜を心地よく揺する。ぱっと離して赤くなった乳首を指の腹で宥めるように撫でる。

「商売女と寝たことない? あ、柚葉とか八戒とか呼ぼうか? 手本にさせても良いけど」
「っの外道が……ひ、んァ゛ぁあっ!♡」

 三ツ谷が腰を突き上げさせると大寿は背筋を仰け反らせ、三ツ谷の陰茎をきつく締め付けさせる。ぴゅる、と少量の精液が噴き出し、三ツ谷の肌を濡らした。もう女じゃんかと嘲笑ってやる。鋭い金の目が三ツ谷を睨み付けた。クソ、と悪態をついて三ツ谷の肩に手を置く。ぎこちなくも緩やかに屈伸運動を繰り返し、自らの肉筒で三ツ谷の陰茎を扱き上げる。商売女のような性を煽らせる要素は一切無いが、普段からでは考えられないことをしている事実に三ツ谷の陰茎が固くなっていく。体内を押し広げる感覚に、大寿が顔を顰めさせる。嫌悪なのか快楽によって耐えているのか三ツ谷は判別がつかない。三ツ谷は大寿の首筋に唇を押し付けさせる。大寿を上目で見つめながら体側の輪郭を確かめるように撫で上げる。臍のあたりを撫でるとひくひくと腹筋が震える。この下に自身の精液を蓄えているのだと思うと仄暗い歓びが歯を見せて手を叩いて笑っている。

「ねぇ、オレのオンナになる気ない?」

 大寿が手を振り払う。振り払われた手はじんとした熱を帯びさせる。大寿は音にこそしなかった。しかしながら金の目は相変わらずどこまでも雄弁に三ツ谷のことを批判し、軽蔑し、嫌悪し、拒絶している。侮蔑と憎悪と明らかな敵意がそこにはあった。屈強な男を体現したような体躯でありながら自身より体格の劣る男に処女を奪われ、三ツ谷と自身の精液やら汗やら涎鼻水やらの体液に塗れ体内に陰茎を咥え込んでおきながら、大寿は自身を見失わずにしっかりと存在している。妹と弟を人質に取られていなければ、大寿は間違いなく三ツ谷の骨格が変形するほど殴っていただろう。たとえ大寿の中に殺人という選択肢がなかったとしても、それで死んでしまうのもきっと面白いかもしれないと三ツ谷は思えた。いつかやって来る、終わりを待つ緩やかな絶望に身を任している間、この瞬間に三ツ谷にとって光のようなものが見えた。縋りたくなるようなものが見えた。尤もそれは三ツ谷が史上最悪の愚連隊となってしまった東京卍會で身についた考え、思想、習慣などにより、きっと一般的な人たちが抱くものよりも随分歪んでいるものだ。

「……だよねー」

 三ツ谷の声帯から生んだ灰色の砂漠のような感情を押し込んだ声が空気を震わせる。
 此処に置いてさえいれば時間だってたくさんある。大寿がどれくらいの時間で音を上げるのか少しだけ楽しみだ。それより先に終わりが来てしまっても良い。終わりが来たらその時はこのセーフハウスに押し込められた大寿は一人寂しく死んでいくのだろうかと想像して、三ツ谷は笑みを深くさせた。
みつたい